前登志夫 【まえ としお】

大正15年1月1日〜平成20年4月5日。吉野での山林生活の中から、アニミズム(精霊信仰)や宇宙的な生命感をもって、土俗的世界をうたう歌を作った。


代表歌集
  • 「子午線の繭」 昭和39年
  • 「霊異記」 昭和47年
  • 「縄文紀」 昭和52年
  • 「青童子」 平成9年

代表作品
かなしみは明るさゆゑにきたりけり一本の樹の翳らひにけり (『子午線の繭』昭和39)

地下鉄の赤き電車は露出して東京の眠りしたしかりけり (『子午線の繭』昭和39)

夕闇にまぎれて村に近づけば盗賊のごとくわれは華やぐ (『子午線の繭』昭和39)

暗道(くらみち)のわれの歩みにまつはれる蛍ありわれはいかなる河か (『子午線の繭』昭和39)

さくら咲くその花影の水に研ぐ夢やはらかし(あした)の斧は (『霊異記』昭和47)

狂ふべきときに狂はず過ぎたりとふりかへりざま夏花揺るる (『霊異記』昭和47)

杉山に朝日差しそめ蝉のこゑかなしみの(かさ)を湧き出づるなり (『霊異記』昭和47)

三人子(みたりご)はときのま黙し山畑に地蔵となりて並びゐるかも (『縄文記』昭和52)

雲かかる遠山畑と人のいふさびしき(ぬか)に花の種子播く (『鳥獣蟲魚』平成4)

夜となりて雨降る山かくらやみに脚を伸ばせり川となるまで (『青童子』平成9)



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