村 鹿は角に麻縄をしばられて、暗い物置小屋にいれられてゐた。何も見えないところで、その青い眼はすみ、きちんと風雅に坐つてゐた。芋が一つころがつてゐた。 そとでは桜の花が散り、山の方から、ひとすぢそれを自転車がしいていつた。 背中を見せて、少女は藪を眺めてゐた。羽織の肩に、黒いリボンをとめて。 「測量船」(昭和5)所収 ■ひとつ前にもどる