明智光秀 (冒頭部分)

福田恆存/初出「文芸」(昭和32・3)



明智光秀(惟任日向守)
  皐月
   楓
  桔梗
  光慶
明智治右衛門
明智十郎左衛門
明智左馬之助光春
斎藤内蔵之助
妻木主計頭
四王天但馬守
藤田伝五郎
進士作左衛門
津田興三郎
溝尾庄兵衛
村越三十郎
比田帯刀
明智兵助
斎藤利次

三宅式部
開田太郎八
安田作兵衛
村井又兵衛
木村治郎左衛門

織田信長
森 蘭丸
  力丸
  坊丸
青山興三
飯川宮松
お能の方
士甲
士乙
番卒

羽柴秀吉
片桐且元
石田三成
福島正則
加藤清正
間者

久我宰相吉道卿
灘波中納言宗豊卿
士御門少将通重卿

里村紹巴

小栗栖の長兵衛
百姓 甲
同  乙
同  丙
同  丁

妖婆

織田家・明智家の侍女・一
同         ・二
同         ・三
同         ・四
同         ・五
同         ・六


  第一幕

天正十年、正月未の一日、昼すぎ、京都山科間の山中。雪がはげしく降つてゐる。
揚幕より小栗栖村の百姓長兵衛が出てくる。本舞台にかからうとしたところで、石につまづき、草鞋の紐をなほす。

長兵衛 まさか雪になるとは思はなかつた。けさがた家を出るとき、空はまつさを、大岩山の峰のあたりに、ちぎれ雲がのどかに流れてゐたが。それにしてもをかしい。通ひなれた道だ、昼まへにはとうに京に着いてゐるはず、それがどうしたことか、さつきからもう一時あまり、山のなかをうろうろするばかりで、道は細まり、一向くだりにかかる気配もない。迷ふはずもないが、いや、迷うたところで、知れてゐる、京はすぐ眼の前だ、急がう。(本舞台に出る)やゝ、また同じところに出てしまつた。この杉の朽木、あのあばら家、たしかに見覚えがある。さうだ、道もかうして二股に分れてゐた。さつきはあれを。さうか、それなら。(下手に折れようとする)

  そのとき、花道七三のところに煙がわき、その中に白衣の妖婆が現れる。

妖婆 長兵衛殿、道が違ふぞ。
長兵衛 誰だ? どこから来た? や、降つて湧いたのか?
妖婆 さうよ、降つて湧いたのよ、地から浸み出たのよ。
長兵衛 どうしておれの名を知つてゐる?

(続きは書店または図書館にて...)



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